オーストラリアの森林火災(ブッシュファイヤー)に関して住人の視点で感じたこと

※2020年1月時点に書いた記事です。現在の状況と相違がある点もあるかと思いますが、ご了承の上ご覧ください。

近頃SNSでオーストラリアの森林火災(こちらではブッシュファイヤー bush fireと呼ばれています)について目にすることが増えました。オーストラリアのTVを始めとしたマスメディアでは数か月前から連日報道がされており、私にとっては馴染み深い話題でした。

ということで今回は、私がオーストラリアで生活をする中で感じた森林火災(ブッシュファイヤー)について書きたいと思います。統計的な情報は調べたら簡単に出てきますので、体験談が中心になります。

オーストラリアで生活をするにあたり避けられない自然災害である森林火災。それは日本での地震災害と同じように生活に密着したものであると感じました。

・森林火災(ブッシュファイヤー)とは

体験談を書く前に、まずは簡単にブッシュファイヤーについて説明しておきたいと思います。

ブッシュファイヤーとは、夏季のオーストラリアの乾燥地帯で過度に温められた木々が自然発火する自然災害です。

ちなみに「ブッシュbush」はオーストラリアにおいて「自然」の意です。自然探索ツアーのことをブッシュウォークと表現したりします。

50℃に迫る高温に乾燥した気候、それに燃えやすいユーカリなどの木々が生い茂るオーストラリア特有の自然災害と言えるでしょう。一応自然災害なのですが、悲しいことに時に人為災害のブッシュファイヤ-も紛れているそうですが。

ちなみに、ブッシュファイヤー自体は毎年発生しています。そのため植生もある程度火災による消失に耐えられる作りとなっており、例年このように被害が甚大になっているという訳ではありません。

今年は比較にならない熱波と極度の乾燥による高温で特別被害が甚大であったという話です。

・森林火災(ブッシュファイヤー)体験談

私はオーストラリアで夏を迎えて初めてブッシュファイヤーという災害の存在を知りました。その時は単に「夏がカラッと乾いているのもいいことばかりじゃないんだな」と感じたのを覚えています。

それから夏が深まるにつれて、気温もぐんぐんと上がり、テレビでブッシュファイヤーの報道が占める割合は増えてゆきました。12月頃だったでしょうか。テレビ越しに見える燃え盛る炎は人の手に余るものに見えました。

ちょうど当時はキャンベラ付近の農場を訪れていたころでした。

ブルーマウンテン国立公園内の見渡す限りの草原にある別荘に訪れた際山の所々から黒い煙が上がっているのを目にしていました。「あれはブッシュファイヤーの影響だよ」とホストのおじさんに言われました。おじさんも物珍しいから見せよう、という感じだったし特別被害が甚大になると当時は思っていませんでしたが、既に前兆があったのですね。

それから拡大した森林火災はブルーマウンテン国立公園を始めとして各地で拡大し、キャンベラやシドニーを煙に包むように、現在に至る被害をもたらしています。

それから移動したカンガルーアイランドでは、森林火災の影響は当時ありませんでした。夏季の乾燥は例年のことでしたが、島内に黒い煙が上がるのは見られませんでした。

しかし現在、カンガルーアイランドについに火の手が上がり、避難の指示が上がるようになっています。ホストの方々とそこに生きる動物たちは元気にしているでしょうか。

アデレードにいた時は熱波が1年で最も強く訪れた時で、実際に昼間は45℃近く気温が上がり、外に居ること自体が困難になっていました。

その時にはニュースの中だけでなく、実際に身の回りの様々な場所で火が上がっているのを目にしました。車窓からそこかしこの木々が赤く染まり、それを近所のおじさんがタバコを吹かしながら眺めていました。消防隊のサイレンの音は日々耳にしました。

アデレードのファームの地域も1度火に包まれたことがあるようで、その当時の話を聞ききました。それから森林を適度に間引いたり、ボランティアの消防団を設立したりすることで被害を拡大しないようになったそうです。

12月、1月頃はオーストラリアを転々として生活をしてきましたが、どの地域でも森林火災の影響を全く受けていないと感じることはありませんでした。国全体が立ち上がって被害の拡大を防ごうと、またそのための援助をしようとしていることを実感しました。

先にも書いたように、オーストラリアの森林火災は毎年のことで、植生もそれに順応したものになっており、例年通りであればそれほど大きな被害にはなりません。

広大な国土の全ての自然を事前に保護することは叶いませんが、各地域で有志が組織した消防団が存在したり(公的な消防署は田舎にそれほど分布していないからです)、事前に木々を間引いておいたり、先人の知恵がオーストラリアで生活をする人々の中に根付いているからです。

ですのでオーストラリアの人々は少々の森林火災を見ても動じません。日本人が少々の地震で動じないのと同様です。

恐ろしい自然災害ではありつつも、オーストラリアの生活には切っても切れない自然災害が森林火災(ブッシュファイヤー)なんだということをオーストラリアで生活をすることで実感しました。

・報道やSNSでの言説について感じること

 もう一つ、オーストラリアの森林火災に関して書きたいことがあります。

これは非常に身勝手な話なのですが、私は報道、近年オーストラリアの森林火災が特にSNSで盛んに取り上げられていることに関していら立ちを覚えることがあるのです。

理由は簡単で、報道特有の「強力な扇情」とそれに伴う「人々がオーストラリアを憐れむ様子」が気に入らないからです。これは偏に私の過度な被害者意識とオーストラリアに対する謎の帰属意識がもたらしたものであることは言うまでもありません。

 どういうことかと言いますと、単純に「可哀そうって言われるのが腹立たしい」ということです。子供の戯言のような理由ですが、どうしても書きたくなったので自由に書きたいと思います。

 オーストラリアでの森林火災(ブッシュファイヤー)は確かに深刻です。多くの土地が現在も燃え続け、多くの動物やそこに住む人々が生活を追われています。

 私は現在オーストラリアに住んでいますので、日本のメディアに接する機会は多くありません。ですから実情はよく分かりませんが、SNSなんかではメディアでは滅多に報道されないオーストラリアの森林火災のことを「オーストラリア全体が燃えている」「地獄のような」「危険極まりないもの」として取り上げているのを目にします。

 それらの多くに含まれる統計的な情報は実際正しいのでしょう。そしてまた、現実に深刻なこの災害を人々が知る機会を作ることは確かに社会的な利益につながるのだと思います。

 ですが私は時折疑問を感じずにはいられません。

 その視点からは、今このオーストラリアで生きている私たちのことが蔑ろにされているんじゃないかと。

 この国に住む私たちは、他のどの国の人々よりも森林火災(ブッシュファイヤー)による被害を知っています。それと同時に、私たちは彼らにとっての「地獄のように」なっているこの国の中で、他の国々の人々と同じように、当たり前の日々を送っているのです。

 そんな私たちのことを被害の及ばぬ対岸から憐憫の眼差しで見つめてくる人々、私はそれを見るたびに苛立ちを覚えます。

 実際は私の言うような憐憫の目は視線ではないのだと思います。素直な同情と善意の賜物なのだと思います。

 きっと私が抱く苛立ちは、不慮の火事で家を燃やした人間の抱く感情とそう変わりはないでしょうか。
周囲の住民は私たちに憐れみの視線を投げ、メディアはその様子をセンセーショナルに煽ることで市民の衆知に貢献します。もしかしたら哀れな私たちのために、地域の方々が、燃え盛る私たちの家の写真とともに家具家電のチャリティを呼び掛けてくれるかもしれません。

どこにも悪い人間はいないのです。しかしその憐れみ自体、こちらに向けられる意識自体が時に私たちの被害者意識を刺激するのだと思います。

もう一つ例を挙げましょう。

オーストラリアで初対面の人と話すとき、私は日本の話題を多く使います。たくさんの人が日本に対して好意的な印象を持ってくれており、先人の努力に感謝が付きません。

そこで私は尋ねます。

「あなたは日本に訪れたことはありますか?」

これまた思いのほかに多くの人が日本を訪れたことがある事実に驚きます。しかし一方で、

「日本は放射能が危ないから行きたくない」

と言う人が一定数いるのも事実です。それは福島県やその近隣に行くことを勧めたからというわけではなく、日本の全ての地域において放射能の危険を憂いているのです。

放射能の科学的な有害性について、私は正しい知識を持ちません。しかしどれくらいの放射能を被ばくするとどんな症状が現れるのかは、今の医療で完全に明らかではないということは知っています。つまり私には、彼らの危惧に対して「科学的に有効な方法で安全性を証明する術」がないのです。安全なのかもしれないし、もしかしたら私たちの予想する何十倍も危険で、日本全国の人々の健康に影響を及ぼし続けているのかもしれない。

しかし私たちは、彼らが危ぶむそんな日本に、もしかしたら危険なのかもしれないと心のどこかで憂いていながらも、当たり前に日々を過ごしています。おそらくは他の国の人々よりも多く放射能の議論を見聞きし、時に発言し、憂慮することがあったとしても、私たちは変わらぬ日常をこの日本で送っています。

私はそんな日々の中に「日本の放射能の被害はまるで地獄のようである!」というセンセーショナルな記事が目に入ったような、この頃はそんな気分になっているのです。

もちろん上の例えは正確ではありません。不確かな放射能の被害と、実際に目視できる森林火災とでは考え方を異にするべきでしょう。例えとしてはその前の、天災により火事になったものの方が正確かもしれません。

やはりこういった総じてネガティブな情報を拡散されるときには、大きなメディアの重要性を実感しますね。どうしても個人や、個人に近い集団からの発信ですと、その個人自体に目がいって、要らぬ示唆を抱いてしまいます。

オーストラリアの森林火災(ブッシュファイヤー)が、彼らの知的好奇心の慰みものになっているという被害者意識を私が抱かないでいられるのは、比較的精査されて公的な発信力を持つと信じているマスコミの成せることなのだと感じます。

最後に

オーストラリアは自然豊かで素敵な国です。私が見てきた限り、旅行で訪れる程度の場所にそれほど大きな被害はありません。
メディアを通して日々目にする「燃え盛る地獄のような」オーストラリアだけでなく、当たり前に人々が生活をしているオーストラリアの日常の景色も心のどこかで見ようとしていただけたらこの上なく嬉しいなと思いつつ、この記事を締めたいと思います。

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3 件のコメント

  • ご無沙汰しております。元気にしてらっしゃるのかしら?
    4月からの大学復帰に向けて充電中かな?

    確かに、対岸の火事として、ただただ、かわいそうというものをメディア先導で
    見せたいものを見せていると思います。

    私もケアンズ滞在中にユーカリの木が多いゆえの自然発火は避けられないと聞きました。
    オーストラリアでは避けられないことなんでしょうね。所変わればですね。

    それにしても今回は、たくさんの野生動物の命が奪われたと思うと、人間のせいかな、
    と温暖化でかなりオーストラリアは影響を受けていると思うので動物たちに申し訳なく思います。
    そして、頑張って家を建てた人のことを思うと、切なくなりました。

    犠牲になる命が少しでも少なく、そして、今ある日常を毎日変わりなく過ごされますよう
    祈る中、豪雨で沈下したこと、本当に安堵しました!

    そして、またボンダイビーチに行きたいな!生活するならボンダイビーチがいいなー!
    オーストラリア英語が、全然分からないけどー!

    えのきさん、またオーストラリア小話など聞かせて下さいね。

    • ご無沙汰しております!
      今はすっかり日本の生活に戻ってしまい、復学準備と就職活動でてんやわんやしています(笑)

      色々と思うところはありましたが、何にしろ鎮火したことが一番嬉しく感じています。
      この報道が今年だけのものではなく世間の関心がこれからも続くことを祈っています。

      帰国した今となってはまた旅行かなにかでオーストラリアに行きたいなーと強く感じています(笑)
      ボンダイビーチ良いですねー。次にシドニーに行けるのはいつになることやら。
      日本にいては使うことも少ないですが、英語も勉強を続けておこうと思いました(笑)

      時々懐かしんでは投稿を続ける予定なので良ければ今後もご覧いただけると嬉しいです。

      • お返事、ありがとうございます!
        大学時代の就職活動は本当に大変ですよね。私は、二度としたくないなーって思います。
        えのきさんも、納得いく結果が得られますよう、応援してますよー!
        たまには、就職活動や、日本とオーストラリアの比較など小話待ってます。

        オーストラリアは出国禁止など厳しい措置をとられているようなので、
        えのきさんはいい時期に帰国したのかもしれないですね。

        森林火災による野生動物の被害がこのように大きなものにならないよう
        心から祈ります。人間活動の犠牲が動物でありませんよう。

        えのきさん、応援してます!

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